「La Tour Tarochan」の昼酒掲示板が火付け役となり、最近では「浪花お好み焼き三昧」のトシ坊さんも取り上げられておられるなど、関西グルメ界の話題を席巻している(嘘)西成界隈ですが、近頃は私もちょくちょく訪れていたりします。
地下鉄動物園前駅と南海電鉄新今宮駅と萩ノ茶屋駅、そして阪堺線旧天王寺支線が囲む三角形の中、要塞のような西成警察署を中心とした一帯は、昔は釜ヶ崎、今はあいりん地区と呼ばれ、あいりん労働福祉センターと付近で毎朝集められる、主に工事現場中心の日雇い仕事を求めて生活する人のための、ドヤと呼ばれる安宿や飲食店が密集している地域です。
町全体が虚飾を一切廃しているわけですから、当然食い物も酒も飾りは一切ありません。そこらにある弁当屋のおかずなども100円や80円といった価格レベルですし、早朝の日雇い求人にあぶれた労働者のために、飲み屋も朝っぱらからの営業が常識です(笑)。
飲み屋のアテは、タンやミノ、ハツといった「高級」な部位以外の、まさに「放るもん」と呼べるホルモン類が中心のセンベロ(1000円でベロベロに酔える店)ワールド。泡盛を出す店も多く、韓国と沖縄、日本がごちゃまぜになった独特の食文化が醸成されています。
確かにお世辞にも衛生的な場所とは言えません。真昼間から一升瓶やワンカップを抱えて道路で寝ている人もいますし、夏場はそこら一体にアンモニアの匂いも漂ったりします(笑)。が、そのウルトラディープな雰囲気ほどには危険なところでもありません。
基本的に、あいりんの労働者達は善良です。ただ、それは「身内」に限った事であって、興味本位で彼らにカメラを向けたり(身元を隠してここに住んでいる人も多いのです)、高そうなスーツを着て暗がりを徘徊したのでは安全は保証できません。また、怪しげな露店や物売りは相手にしてはいけませんし、ネットなどで名が知れている宿以外には泊まらないほうが賢明でしょう。
彼らのほとんどと同じように、生活の一部として淡々と飯を食らい、酒を飲む。そういう楽しみ方をする分には、財布にも人にも実に暖かいところなのです。