なにやら世間では立ち飲み(最近のトレンドでは立ち呑みと書くのかな?(笑))がいつの間にかブームになってるようですね。
東京では恵比寿あたりが流行の中心地になっているようで、それもこじゃれた感じの女性でも抵抗なく立ち寄れる店が増えてきているみたいです。
「角打ち」とも呼ばれる酒屋併設タイプの立ち飲み店を中心として、立ち飲み文化が浸透しきっている大阪に住んでいるとなかなか気付かないのですが、実は同じ関西の京都や神戸であっても、大阪以外の土地で立ち飲み店を探すのは非常に難しかったりするんですよね。
ま、大阪の場合は多くが「安いから帰宅途中で気軽に寄れる」という理由で立ち飲み店を利用しているわけですが、ブームの担い手として紹介されている店を見ると、料理や酒にこだわりを出している店が多いように思います。その分、私のようなB級大阪人からすると許容しにくい値段にはなってますが(笑)。
まあ見栄を大事にしがちな東京でも流行っているという事で、このブームは低成長時代の象徴みたいに取り上げられがちなんですが、純粋にグルメと言う観点から見ても、立ち飲みという形態は案外バカにしたもんじゃないという事が分かります。
その理由としては、まず第一に「長居がしにくい」という点があります。
ビールの味をうんぬんするのは最初の一杯だけだ、なんて事をよく言いますが、やはり長居をしてだらだらと飲んでいるとだんだんモノの味がどうでも良くなってくるのは確かで、その点立ち飲みで酔っ払うまで飲むのは物理的に難しいですからね。
もう一つは、「いつでも立ち去れる」という点です。
いったん座敷やテーブル席に座ってしまっておしぼりなんぞを出されると、たとえ料理が気に食わなかったり酒の値段が高くても、ある程度の数をつい頼んでしまうのが普通だと思います。しかし立ち飲みならば、ビール1本と小鉢だけでも十分なお客さんであり、全く店の空気は乱れません。
そして最後にはやはりコストパフォーマンス。
それなりに場所やサービスにコストがかかる一般店では、やはり値段設定にある程度の限界が存在します。特に、生ものとは違って鮮度や仕入れ値の変動に関係なく稼げる酒類は飲食店経営にとっての生命線であり、料理はそれなりでもコストが安い生ビールを小さなグラスで出して500円、なんてあこぎな商売をしているところも少なくありません。
立ち飲みは客の出入りに対する抵抗が少ないために、酒と肴の値段バランスが良くなければ流行りません。もっとも、単価が少ないゆえに客の回転を稼がなければならないので、あまり料理に手をかけられないという欠点はありますが、その分素材とアイデアが生きる分野でもあるんですよね。
大阪でも従来の角打ちに加えて「活力屋」のような料理で勝負する立ち飲みが増えて、この分野も楽しくなってきそうです。